蒸溜所名・地域名をラベルに書ける条件とは|ボトラーズの扱い
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最終更新 2026-09-29
スコッチのラベルで、法令に載る蒸溜所名をブランド名として、またはブランド名と同じような位置や目立ち方で使えるのは、中身をその蒸溜所で全量蒸溜した場合だけです。地域名も同じ考え方で、キャンベルタウン・アイラ・ハイランド・ローランド・スペイサイドの名前は、原則としてその地域で蒸溜したスコッチにしか使えません。
根拠は英国の法令 The Scotch Whisky Regulations 2009(以下「規則」)の9条と10条です。ここでは主なルールを、スコッチウイスキー協会(SWA)の指針の説明とあわせて整理します。
早見表
| 場面 | 使える条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 附則1に載る蒸溜所名をブランド名(またはそれと同じような位置・目立ち方)で使う | その蒸溜所で全量を蒸溜したウイスキー | 規則9条1項 |
| 2009年11月23日より後に付いた蒸溜所名を、その蒸溜所の所有者がブランド名にする | その蒸溜所で全量を蒸溜したウイスキー | 規則9条2項 |
| 保護された5つの地域名 | その地域で蒸溜したスコッチ | 規則10条1項 |
| 区分名の直前に地域名を置く | その地域で蒸溜したもの。語順は「Speyside Single Malt Scotch Whisky」 | 規則8条5項、SWA指針 8.1 |
蒸溜所名をブランド名に使える条件
規則9条1項は、附則1に載っている蒸溜所名を、そのウイスキーがその蒸溜所で全量蒸溜されたものでない限り、スコッチのブランド名やその一部として使ってはならないと定めています。位置や目立ち方でブランド名と同じような使い方をすることも禁止です。
附則1は規則が2009年に定めたリストで、Ardbeg、Springbank、Highland Park、The Glenlivet などの名前が並びます。英国政府が公表している Technical File(2019年6月版)の附属書1のリストには、附則1に無い Annandale、Starlaw、Strathearn、Wolfburn も載っています。
2009年11月23日の施行(規則1条)後に付いた蒸溜所名(新設・再開の蒸溜所を含む)は9条2項の対象で、その蒸溜所の所有者は、そこで全量蒸溜していないスコッチのブランド名にその名前を使えません。改名した蒸溜所が、改名前に蒸溜した原酒に新しい名前を使うことは認められています(附則2)。
独立瓶詰業者の瓶と蒸溜所名
規則には、「独立瓶詰業者(インディペンデントボトラー)」や「オフィシャル」を名指しした規定はありません。9条1項の条件は、その蒸溜所で全量を蒸溜したかどうかだけで、誰が瓶詰め・販売するかは条件に入っていません。両者の違いはオフィシャルボトルとボトラーズの違いで扱っています。
SWAの指針は、蒸溜所名と誤解されやすい名前の既存ブランドについて、誤認を避ける方法の1つとして、実際に蒸溜した蒸溜所名をラベルと包装にはっきり書くことを挙げています。規則の説明覚書も、ブランド名や包装から蒸溜地を誤認されるおそれがあるとして蒸溜所名を自主的に書き添えているブランドがあることに触れ、小売店のプライベートブランドのシングルモルトを取り上げています。
一方で規則9条5項は、シングルモルトとシングルグレーンについて、実際に蒸溜した者(または蒸溜所の所有者・運営者)以外が蒸溜したと受け取られる見せ方を禁じています。蒸溜所の外の会社が瓶詰め・販売する場合は、その会社が蒸溜者だと思わせない見せ方が求められます。説明覚書によれば、この規定はブレンデッドには影響しません。商標など規則以外の法律による制約は、ここでは扱いません。
文字の大きさについて
規則・SWAの指針(2025年版)・Technical File には、蒸溜所名の文字の大きさを数値(mmやポイント)で定めた条文はありません。指針で「目立ち方」の基準が示されているのは区分名と地域名についてです。
独立瓶詰め業者のラベルで蒸溜所名をどう出すかは、法令とは別に、樽を売った蒸溜所との取り決めで決まることがあります。マッカランやハイランドパークのように、蒸溜所名の使用自体を認めていない蒸溜所もあります。
目立ち方の規定がはっきりあるのは区分名の方で、規則8条3項は、一部の例外を除き、区分名を容器や包装にある他のどの説明とも同等以上に目立たせることを求めています。詳しくはスコッチウイスキーの区分と表示にまとめています。
実在しない蒸溜所に見える名前
規則9条4項は、製品全体の見せ方から、実際とは別の蒸溜所や場所で蒸溜されたと受け取られるおそれのある表示・包装・広告・宣伝を禁じています。SWAの指針は架空の「GLEN KELSO」を例に挙げ、実在しない蒸溜所の名前に見えるブランド名に「Glen Kelso Distillery Ltd」のような社名が添えられると、誤解の危険が大きくなると説明しています。
SWAは誤認を避ける方法として、紛らわしい名前を避けること、実際の蒸溜所名をはっきり書くこと、名前を変えること(KELSO を KELSO CASTLE にするなど)を挙げています。判断は各ブランドオーナーが行い、SWAはこれを規則についての指針にすぎないと断っています。
地域名を名乗れる条件
規則10条が保護している地名は次の5つで、「地区」と「地方」に分けて定められています。
| 地名 | 種別 | 範囲 |
|---|---|---|
| キャンベルタウン | 地区 | アーガイル・アンド・ビュート議会のサウス・キンタイア選挙区 |
| アイラ | 地区 | アイラ島 |
| ハイランド | 地方 | 法令で定めた境界線より北 |
| ローランド | 地方 | 同じ境界線より南 |
| スペイサイド | 地方 | マリー議会の8選挙区と、ハイランド議会のバデノック・アンド・ストラスペイ選挙区 |
これらの名前は、その地域で蒸溜したスコッチにしか使えません(10条1項)。似た名前で蒸溜地を混同させるおそれのある表示も禁止で、スコッチ以外のウイスキーも対象です(10条3項)。
区分名と組み合わせるときは、区分名の直前に置きます。SWAの指針は、スペイサイドで全量蒸溜したシングルモルトなら「Speyside Single Malt Scotch Whisky」とこの語順で書けると説明しています。区分名と離して書くこともできますが、その場合は区分名より目立たせてはいけません。
スペイサイドはハイランド地方の中にあるため、スペイサイドで蒸溜したスコッチは「Highland」「Speyside」のどちらでも表示できます。5つ以外のスコットランドの地名も、その地で全量蒸溜していれば同じやり方で使え、SWAは「Orkney Single Malt Scotch Whisky」を例に挙げています。アイランズ(島々)は、保護された地域としては定義されていません。産地区分の全体はスコッチの産地の違いにあります。
附則3は、10条1項が適用されない場合を定めています。主なものは次の3つです。
- 2009年9月1日より前に登録された商標や社名の一部としてだけ地域名が出る場合。SWAの例は「HIGHLAND QUEEN Scotch Whisky」と「Highland Distillers Ltd」です。
- ブレンデッドモルト・ブレンデッドグレーン・ブレンデッドで、混ぜた原酒の蒸溜地として地域名を挙げる場合。原酒がすべて挙げた地域だけで蒸溜されていることが条件で、例は「a Blend of Highland and Islay malts」です。
- 同じブランドオーナーが、自社の別ブランドとその蒸溜地域名に触れる場合。
ラベルのどこを見るか
- 附則1に載る蒸溜所名がブランド名として書かれていれば、規則9条1項により、中身はその蒸溜所で全量蒸溜したものに限られます。
- 独立瓶詰業者などのブランドでは、ブランド名とは別に、実際に蒸溜した蒸溜所名が書き添えられていることがあります。
- 地域名は区分名の直前を見ます。「Islay Single Malt Scotch Whisky」のように区分名の前にある地名は、その地で全量蒸溜したことを示します。シングルモルトの条件はシングルモルトと名乗れる条件にまとめています。
- 通販の商品名だけで判断せず、商品画像でラベル正面のブランド名と、区分名の前の地名を確かめます。
出典
- https://www.edinburghwhiskyacademy.com/blogs/explainer/explainer-independent-bottlers
この記事は、規則などが定める主なルールを解説したものです。詳細は原典を確認してください。
- The Scotch Whisky Regulations 2009 規則1条(施行日)
- 同 規則8条
- 同 規則9条
- 同 附則1
- 同 附則2
- 同 規則10条
- 同 附則3
- 説明覚書 Explanatory Memorandum(2009)
- Technical File for Scotch Whisky(2019年6月)
- SWA「Guidance for Producers and Bottlers」(2025年版)
英国の法令 The Scotch Whisky Regulations 2009 とその説明覚書、英国政府が公表している Technical File の内容を、Open Government Licence v3.0 のもとで利用しています。
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よくある質問
- ボトラーズ(独立瓶詰業者)の瓶に蒸溜所名を書いてもよいのですか。
- The Scotch Whisky Regulations 2009 に独立瓶詰業者を名指しした規定はありません。蒸溜所名をブランド名のように使う条件は、その蒸溜所で全量を蒸溜したことです(規則9条1項)。スコッチウイスキー協会の指針は、蒸溜所名と誤解されやすい名前の既存ブランドについて、実際に蒸溜した蒸溜所名をラベルにはっきり書くことを誤認防止の方法の1つに挙げています。ただしシングルモルトとシングルグレーンでは、瓶詰め・販売する会社が自分を蒸溜者だと思わせる見せ方は禁止です(規則9条5項)。
- 蒸溜所名の文字の大きさに決まりはありますか。
- 数値(mmやポイント)の規定はありません。規則9条1項の基準は、位置や目立ち方でブランド名と同じような使い方をしているかどうかで、その使い方ができるのはその蒸溜所で全量蒸溜したウイスキーだけです。目立ち方をはっきり定めているのは区分名の方です(規則8条3項)。
- アイラで熟成しただけのスコッチに「Islay」と表示できますか。
- 規則10条1項が地域名を使う条件にしているのは、その地域で蒸溜したことです。ほかの地域で蒸溜し、アイラで熟成しただけのスコッチは、附則3の例外に当たらない限り、表示に「Islay」を使えません。区分名の直前に「Islay」と置けるのも、アイラで全量蒸溜したものに限られます。