ローランドモルトとは|3回蒸溜の伝統と2005年以降の新設蒸溜所
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最終更新 2026-09-30
ローランドモルトは、スコットランドを東西に横切る法定の境界線より南で蒸溜されたモルトウイスキーです。このサイトの収録では稼働中の蒸溜所が10か所あり、そのうち6か所は2005年以降に蒸溜を始めた蒸溜所です。
早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法令上の区分 | スコッチウイスキー規則2009 第10条が保護する「地方」 |
| 範囲 | ハイランドとの境界線より南のスコットランド |
| このサイトの収録 | 稼働10・解体6・閉鎖1 |
| 3回蒸溜 | 全量を3回蒸溜するオーヘントッシャン、2023年に再開したローズバンクなど一部 |
| 2005年以降に蒸溜を始めた蒸溜所 | ダフトミル、アイルサベイ、アナンデール、キングスバーンズ、グラスゴー、リンドーズアビー |
法令上の範囲
スコッチウイスキー規則2009の第10条は、ハイランド、ローランド、スペイサイドの3つを「地方」として保護しています。ローランドは、ハイランド地方とローランド地方を分ける線より南の部分です。
線は同条第7項にあり、北海峡からクライド湾の南岸をグリーノックへ進み、カードロス駅、キャンプシー丘陵のアールズシート山頂、ウォレス・モニュメントを結んだあと、道路のB998とA91をたどってミルナソートでM90に移り、ブリッジ・オブ・アーンからアーン川、テイ川とテイ湾の南岸をたどって北海に至ります。ラベル、包装、広告にローランドの名を入れられるのは、この線より南で蒸溜したウイスキーに限られます。
1494年の記録と1784年の線引き
スコッチウイスキー協会(SWA)は、修道士ジョン・コーに麦芽8ボルを渡してアクア・ヴィテを造らせたという1494年の王室財務記録の一節を紹介しています。コーがいたのはファイフのリンドーズ修道院で、リンドーズアビー蒸溜所はこの記録を、スコットランドでウイスキーが造られていたことを示す最初の文書と説明しています。同蒸溜所は修道院跡のそばで2017年に蒸溜を始め、公式サイトは「523年ぶり」の蒸溜としています。
ハイランドとローランドの間に初めて線を引いたのは1784年のWash Actで、線の両側で課税の方法が分けられました。Whisky Magazine によると、線は1785年と1793年に引き直され、1816年の小規模蒸溜器法で地域による税の区別はなくなりました。クラクマナンシャー議会の郷土史ページは、ローランドの蒸溜業者スタイン家が中身を短時間で入れ替えられる浅く幅の広い蒸溜器を開発したこと、イングランドへ積み出されたローランドのウイスキーが1786年にも同国の市場の4分の1を占め、その多くがジンの原料として再溜されたことを紹介しています。
閉鎖と新設
このサイトの収録で解体・閉鎖となっているローランドの7か所は次のとおりです。年は収録データの値です。
| 蒸溜所 | 場所 | 創業〜閉鎖 |
|---|---|---|
| セントマグダレン | リンリスゴー | 1765〜1983年 |
| リトルミル | ボウリング | 1772〜1992年 |
| インヴァーレヴン | ダンバートン | 1938〜1991年 |
| キンクレイス | グラスゴー | 1957〜1975年 |
| グレンフラグラー | エアドリー | 1965〜1985年 |
| キリロック | エアドリー | 1965〜1985年 |
| レディーバーン | ガーヴァン | 1966〜1975年 |
このうちインヴァーレヴン、キンクレイス、レディーバーンは、グレーンウイスキーの蒸溜所を含む大きな施設の中に置かれたモルトの設備でした(英語版Wikipedia)。レディーバーンがあったガーヴァンの敷地には、2007年にアイルサベイが建てられています(scotchwhisky.com)。キリロックは、英語版Wikipediaではエアドリーのグレンフラグラー蒸溜所が出した銘柄の一つとして書かれています。1993年にはローズバンクが6月30日に最後の樽を詰め、ブラッドノックもユナイテッド・ディスティラーズのもとで操業を終えています。収録データの上では、ブラッドノックが2000年に蒸溜を再開するまで、ローランドで動いていたモルト蒸溜所はオーヘントッシャンとグレンキンチーの2か所になります。グレンキンチーの公式サイトは、自らをこの地域で数少ない生き残りの蒸溜所の一つとしています。
2005年以降は新設が続きました。
| 蒸溜所 | 場所 | 収録上の創業年 | 補足 |
|---|---|---|---|
| ダフトミル | ファイフ、クーパー近くの農場 | 2005 | 農場で育てた大麦を使う |
| アイルサベイ | エアシャーのガーヴァン | 2007 | ウィリアム・グラント&サンズが建設 |
| アナンデール | ダンフリーズ&ガロウェイのアナン | 2014 | 1836年創業・1918年閉鎖の蒸溜所を再建。2014年11月9日に最初のスピリッツ |
| キングスバーンズ | ファイフ、セントアンドルーズ近く | 2014 | ウィームス・ファミリー・スピリッツの蒸溜所 |
| グラスゴー | グラスゴーのヒリントン | 2014 | 公式サイトは2012年設立としている |
| リンドーズアビー | ファイフのニューバラ | 2017 | リンドーズ修道院跡のそば |
ブラッドノックは2017年6月に、ローズバンクは2023年7月に生産を再開しました。稼働中の10か所を地域で分けると、ファイフに3か所、南西部のエアシャーとダンフリーズ&ガロウェイに3か所、グラスゴー周辺に2か所、フォルカークとイーストロージアンに1か所ずつです。蒸溜所ごとの一覧はローランドの蒸溜所に、スコットランド全体の新設は新しいスコッチの蒸溜所に、閉鎖後の再開は復活した蒸溜所にまとめています。
3回蒸溜
オーヘントッシャンは、すべての原酒を3回蒸溜していると公式サイトで説明しています。原酒は81%まで上がり、2回蒸溜では通常70%程度にとどまるとしています。日本の輸入元サントリーは、3回蒸溜を「ローランドの伝統」と説明しています。
ただし、いまのローランドで3回蒸溜を行う蒸溜所は一部です。英語版Wikipediaは、2019年まではオーヘントッシャンがローランドで唯一3回蒸溜のモルトを出す蒸溜所だったとしています。その後、グラスゴー蒸溜所がシングルモルト「Glasgow 1770」に3回蒸溜のリリースを加え、ローズバンクは2023年7月18日、再開後最初の樽に3回蒸溜のニューメイクを詰めました。回数ごとの仕組みと取り出し度数は蒸溜回数の解説で扱っています。
味の傾向と例外
英語版Wikipediaは、ローランドのウイスキーの多くはピート由来のスモーキーさがなく、軽く草のような傾向があるとしています。これは傾向で、例外も多くあります。アイルサベイが2016年2月に出した最初のシングルモルトは、強くピートを効かせた年数表記なしの1本でした。scotchwhisky.com は、同蒸溜所が4つの異なる原酒のスタイルを造り分けていると書いています。アナンデールもピーテッドの原酒を「マノスウォード」の名で瓶詰めしています(マノワーズとマノスウォードの違い)。
Whisky Magazine は、「ローランドらしい」といった地域ごとの言い方が大ざっぱだと批判されてきたこと、統計的な分類の研究で蒸溜所の所在地と香味の結びつきが弱かったことを紹介しています。地方名は蒸溜した場所を示す表示で、味を示すものではありません。
買うときに見るところ
- ラベルや商品名の「Lowland」は、ローランドで蒸溜したことを示します。規則第10条は、ほかの場所で蒸溜したウイスキーにこの名を使うことを禁じています。
- 「Triple Distilled」は蒸溜回数の表示です。オーヘントッシャンは3回蒸溜を公式サイトで掲げています。日本ではサントリーがオーヘントッシャン12年を700ml瓶で扱っています。
- 銘柄名が蒸溜所名と違うものがあります。リンドーズアビーの主力「MCDXCIV」はローマ数字で1494、グラスゴー蒸溜所のシングルモルトは「Glasgow 1770」の名で出ています。
- アナンデールは、1樽ずつをカスクストレングスで瓶詰めしていると説明しています。同じ銘柄名でも、樽が違えば度数も違います。
- ダフトミルは夏と冬に季節ごとのリリースを出しています。公式サイトによると最初の瓶詰めは2018年6月の12年物で、本数は629本でした。
出典
- https://www.legislation.gov.uk/uksi/2009/2890/regulation/10
- https://www.scotch-whisky.org.uk/discover-scotch/story-of-scotch/
- https://lindoresabbeydistillery.com/our-story/lindores-abbey-whisky-1494/
- https://lindoresabbeydistillery.com/
- https://whiskymag.com/articles/exploring-the-geography-of-taste/
- https://www.clackmannanshire.scot/index.php/history/whisky-excise-laws
- https://whiskyadvocate.com/Rosebank-Restarts-Production-After-Three-Decades-of-Silence
- https://whiskyadvocate.com/Take-A-Tour-of-Rosebank-Distillery
- https://scotchwhisky.com/whiskypedia/1823/bladnoch/
- https://www.malts.com/en/glenkinchie
- https://www.auchentoshan.com/our-process
- https://products.suntory.co.jp/d/5010496001769/
- https://www.glasgowdistillery.com/
- https://www.daftmill.com/
- https://www.kingsbarnsdistillery.com/pages/about-kingsbarns
- https://annandaledistillery.com/
- https://www.annandaledistillery.com/about-us/
- https://www.annandaledistillery.com/library/single-cask-single-malt/
- https://scotchwhisky.com/whiskypedia/1805/ailsa-bay/
- https://en.wikipedia.org/wiki/Lowland_single_malts
- https://en.wikipedia.org/wiki/Inverleven_distillery
- https://en.wikipedia.org/wiki/Kinclaith_distillery
- https://en.wikipedia.org/wiki/Ladyburn_distillery
- https://en.wikipedia.org/wiki/Glen_Flagler_distillery
家で試すなら
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よくある質問
- ローランドには蒸溜所がいくつありますか。
- このサイトの収録では、稼働中が10か所(オーヘントッシャン、グレンキンチー、ブラッドノック、アイルサベイ、アナンデール、ダフトミル、キングスバーンズ、リンドーズアビー、グラスゴー、ローズバンク)、解体が6か所、閉鎖が1か所です。資料によって数え方が違うため、ほかの資料の数とは一致しないことがあります。
- ローランドのウイスキーはすべて3回蒸溜ですか。
- いいえ。すべての原酒を3回蒸溜していると公式に説明しているのはオーヘントッシャンです。2023年に再開したローズバンクも3回蒸溜のニューメイクを樽に詰めており、グラスゴー蒸溜所は「Glasgow 1770」に3回蒸溜のリリースを出しています。英語版Wikipediaは、2019年まではローランドで3回蒸溜のモルトを出すのはオーヘントッシャンだけだったとしています。
- ローランドとハイランドの境目はどこですか。
- スコッチウイスキー規則2009 第10条第7項が定める線です。北海峡からクライド湾の南岸をグリーノックへ進み、カードロス駅、アールズシート山頂、ウォレス・モニュメントを結んだあと、道路のB998、A91、M90をたどってブリッジ・オブ・アーンに至り、アーン川、テイ川とテイ湾の南岸を通って北海に至ります。この線より南がローランドです。