ウイスキーの蒸溜回数とは|2回・3回・2.5回蒸溜の違いと度数
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最終更新 2026-09-29
スコッチのモルトウイスキーは、多くがポットスチルと呼ばれる単式の蒸溜器で2回蒸溜されます。3回蒸溜のオーヘントッシャンやローズバンク、一部の液だけをもう1回蒸溜して「2.5回」と数えるスプリングバンクは、この基本形を蒸溜所ごとに変えた例です。
英国政府が公開しているスコッチの製品仕様書(2019年6月版)は、モルトのスコッチは通常2回、アイルランドのポットスチルウイスキーは通常3回蒸溜されると説明しています。法令は蒸溜の回数を定めていません。ここでは蒸溜所の公式の説明と業界誌の解説をもとに、回数ごとの仕組みと取り出し度数を整理します。
早見表
度数は最後の蒸溜で取り分けた原酒の値で、瓶の度数ではありません。「—」は、ここで挙げた出典に数値がないものです。
| 回数 | 例 | 取り出し度数 |
|---|---|---|
| 2回 | ロングロウ(スプリングバンク蒸溜所) | 68% |
| 2回 | オーヘントッシャンが示す一般的な2回蒸溜 | 70%程度 |
| 2.5回 | スプリングバンク | 71〜72%(平均) |
| 2.81回 | モートラック | — |
| 3回 | ヘーゼルバーン(スプリングバンク蒸溜所) | 74〜76% |
| 3回 | オーヘントッシャン | 81%(平均) |
| 3回 | ローズバンク | — |
2回蒸溜の流れ
製品仕様書によると、モルトのスコッチは次の順で造られます。糖化槽(マッシュタン)で砕いた麦芽と湯を混ぜて麦汁を取り、発酵槽(ウォッシュバック)で酵母を加えて発酵させます。発酵を終えた液はウォッシュと呼ばれ、仕様書はホップを使わないビールに近い香りと味だと説明しています。オーヘントッシャンは、この段階の度数を約8%としています。
| 段階 | 蒸溜器 | できる液 |
|---|---|---|
| 1回目 | 大きめの初溜釜(ウォッシュスチル) | ローワイン。受け槽に集めて2回目へ送る |
| 2回目 | やや小さい再溜釜(スピリットスチル) | 中間の部分だけを熟成用に取り分ける |
2回目の蒸溜では、最初に出る部分(フォアショッツ)と終わりの部分(フェインツ)を除き、中間のミドルカットだけを取ります。除いた部分は次のローワインと一緒に蒸溜し直します。仕様書は、2回目のほうが蒸溜担当者の管理がずっと細かいと述べています。
ポットスチルは、1回ごとに中身を入れ替えて蒸溜するバッチ式の蒸溜器です。The Scotch Whisky Regulations 2009 は、シングルモルトの条件の一つにポットスチルで蒸溜することを挙げていますが、回数には触れていません。グレーンウイスキーは多くが連続式の蒸溜機で造られ、仕様書はその伝統的な型をコフィースチルとしています。
3回蒸溜
オーヘントッシャンは、すべての原酒を3回蒸溜していると公式サイトで説明しています。scotchwhisky.com によると蒸溜器は3基です。初溜釜は2回蒸溜の場合と同じように動かし、中間の蒸溜器から出た液を二つに分けます。度数の高い前半だけを3基目の再溜釜に送り、度数の低い後半は、次に初溜釜から出た液と合わせて蒸溜し直します。取り出す原酒は平均81%です。公式サイトは、約8%のウォッシュが3回の蒸溜で81%まで上がり、2回蒸溜では通常70%程度にとどまると説明しています。
ローランドのローズバンクは、1993年6月30日に最後の樽詰めをして操業を止めていました。Whisky Advocate によると、2023年7月18日に3回蒸溜のニューメイクを再開後最初の樽に詰めています。再建後の蒸溜所には形の異なる銅製のポットスチルが3基あり、凝縮器にはワームタブを使います。
キャンベルタウンのスプリングバンク蒸溜所では、ピートを使わない麦芽で造るヘーゼルバーンが3回蒸溜です。scotchwhisky.com は取り出し度数を74〜76%としています。
2.5回と2.81回
スプリングバンク蒸溜所では、スプリングバンクを2.5回、ロングロウを2回、ヘーゼルバーンを3回蒸溜しています。scotchwhisky.com によると蒸溜器は3基で、1基は直火式、1基はワームタブを使います。2.5回の液の流れは次のとおりです。
| 順 | 液の流れ |
|---|---|
| 1 | 初溜釜で得たローワインのうち、度数の高い部分を再溜の張り込み槽へ直接送る |
| 2 | 残りのローワインは中間の蒸溜器で蒸溜し、再溜で除いた前後の部分と一緒にフェインツの受け槽へ入れる |
| 3 | 受け槽の液が最後の蒸溜にかける量の80%、1の強いローワインが20%になる |
最後の蒸溜にかける液には、この蒸溜が2回目になる1の強いローワインと、中間の蒸溜器を経て3回目になる部分が混ざるため、「2.5回」と数えます。取り出し度数は平均71〜72%です。ロングロウは2回蒸溜で、68%で取り出します。
モートラックの公式サイトは、自社の蒸溜を「2.81回」と呼び、アレクサンダー・カウイーが考案して今も続くモートラック独自の製法と説明しています。scotchwhisky.com の解説では、形と大きさの異なる蒸溜器で3つの流れの原酒を造ります。1つは初溜釜と再溜釜を1基ずつ使う通常の2回蒸溜です。残りの2つは、別の初溜釜で得たローワインを分け、80%を再溜釜にかけ、度数の低い残りの20%を「ウィーウィッチー」と呼ばれる小さな蒸溜器で3回蒸溜して、3回目の後に中間の部分を取ります。同じ記事は、2.7回とする人もいるが2.81回が公式の数字だと書いています。
回数と度数の関係
同じスプリングバンク蒸溜所の3銘柄では、取り出し度数は2回のロングロウが68%、2.5回のスプリングバンクが71〜72%、3回のヘーゼルバーンが74〜76%です。オーヘントッシャンも、3回蒸溜の81%を2回蒸溜の70%程度と対比しています。
法令が定めるのは回数ではなく度数の上限です。規則3は、原料と製法に由来する香りと味が残るよう、94.8%未満で蒸溜することを求めています。
取り出した度数のまま瓶に入るわけではありません。製品仕様書によると、ニューメイクは樽に詰める前に60〜70%へ加水するのが普通です。Whisky Magazine は、スコットランドの多くのモルト蒸溜所が63.5%前後で樽に詰めると書いています。瓶詰めの度数は40%以上と定められ、熟成後に加水せず瓶詰めしたものはカスクストレングスと呼ばれます。
風味について、オーヘントッシャンは3回蒸溜で不純物を取り除くため、果実や柑橘の香りが出ると説明しています。一方、製品仕様書は蒸溜器の形の違いが風味の違いにつながると書いており、風味を左右する条件は回数に限りません。
ラベルのどこを見るか
- 規則8が表ラベルに義務づけているのは「Single Malt Scotch Whisky」などの区分名で、蒸溜回数は義務の表示事項ではありません。確かめるには蒸溜所の公式の説明を見ます。
- オーヘントッシャンは公式サイトで「Triple distilled」を掲げています。
- スプリングバンク蒸溜所の製品は、銘柄名で回数が分かれます。ラベルの銘柄名が「スプリングバンク」なら2.5回、「ロングロウ」なら2回、「ヘーゼルバーン」なら3回です。
- ウォッシュスチル、ローワイン、ミドルカットなどの言葉はスコッチの用語集にまとめています。
出典
- https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5fd36667e90e07662ed92c85/Scotch_Whisky_Technical_File_-_June_2019.pdf
- https://www.legislation.gov.uk/uksi/2009/2890/regulation/3
- https://www.legislation.gov.uk/uksi/2009/2890/regulation/8
- https://www.auchentoshan.com/our-process
- https://www.auchentoshan.com/
- https://scotchwhisky.com/whiskypedia/1812/auchentoshan/
- https://www.springbank.scot/about/process/
- https://scotchwhisky.com/whiskypedia/1892/springbank/
- https://en.wikipedia.org/wiki/Springbank_distillery
- https://www.malts.com/en/mortlach
- https://scotchwhisky.com/magazine/ask-the-professor/7498/the-mortlach-conundrum/
- https://whiskyadvocate.com/Take-A-Tour-of-Rosebank-Distillery
- https://whiskymag.com/articles/how-does-cask-filling-strength-affect-whisky-maturation/
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よくある質問
- 3回蒸溜のスコッチにはどんな蒸溜所がありますか。
- オーヘントッシャンは、すべての原酒を3回蒸溜していると公式サイトで説明しています。2023年に再開したローズバンクも3回蒸溜です。スプリングバンク蒸溜所では、ピートを使わない麦芽で造るヘーゼルバーンを3回蒸溜しています。
- 2.5回蒸溜とはどういう意味ですか。
- スプリングバンクの蒸溜方法を指します。初溜で得たローワインの強い部分は再溜へ直接送り、残りは中間の蒸溜器でもう一度蒸溜してから合わせます。最後の蒸溜が2回目になる部分と3回目になる部分が混ざるため2.5回と数えます。scotchwhisky.com によると、最後の蒸溜にかける液の20%が直接送った強いローワイン、80%が中間の蒸溜器を経た液などを集めた受け槽の液です。
- 蒸溜回数が多いほど度数は高くなりますか。
- スプリングバンク蒸溜所とオーヘントッシャンの例では、回数が多いほど取り出し度数が高くなっています。スプリングバンク蒸溜所では、2回のロングロウが68%、2.5回のスプリングバンクが71〜72%、3回のヘーゼルバーンが74〜76%です。ただし樽に詰める前に60〜70%へ加水するのが普通で、瓶の度数は40%以上の範囲で製品ごとに決まります。法令は回数を定めず、94.8%未満で蒸溜することを求めています。