ノンチルフィルターとは|冷却濾過をしない理由と白く濁るしくみ
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最終更新 2026-09-29
ノンチルフィルター(non-chill filtered)は、瓶詰め前に冷却濾過をしていないことを示す表示です。冷却濾過は低温や加水でウイスキーが白く濁るのを抑える工程で、これをしない蒸溜所には、濁りが出にくい46%前後以上で瓶詰めすると説明するところがあります。
早見表
| 項目 | 冷却濾過をした製品 | ノンチルフィルターの製品 |
|---|---|---|
| 瓶詰め前の処理 | 冷やしてから濾過する | 冷やしての濾過はしない。熟成中に混じった木の粒を除く濾過はする |
| 低温や加水での濁り | 出にくい | 出ることがある |
| ラベルの表記 | ふつうは書かれない | Non-chill filtered、non chill filtered など |
| 度数 | スコッチの下限は40% | 公式の説明にある例は46%、46.3%、50%など |
冷却濾過で取り除くもの
英国政府が公開しているスコッチの製品仕様書(2019年6月)は、すべてのスコッチは瓶詰め前に濾過して、熟成中に混じった木の細かな粒を取り除くと説明しています。冷却濾過はそれとは別の工程で、一般的ではあるものの、すべてのスコッチで行うわけではないとされています。
仕様書によると、低温にさらされたスコッチでは一部の長鎖エステルが溶けきれなくなり、瓶の中で濁りや沈殿になることがあります。冷却濾過はこれを「ヘイズ・フロック」として取り除く工程で、多くの消費者が澄んだ液色を期待するため、決まった温度で濾過して温度が変わっても澄んだ状態を保つ、という説明です。
同じ仕様書は、濾過はこの濁りを防ぐ範囲にとどめ、色や香り、味を取り除く目的で使ってはならないとも定めています。色や香り、味を取り除くことはスコッチの定義で禁じられている、という位置づけです。定義の全体はスコッチウイスキーとはにまとめています。
冷やす温度は資料によって書き方が違います。業界メディアのscotchwhisky.com(2017年)は0℃前後、ときにはそれ以下まで冷やし、温まる前にフィルターに通すと説明し、Whisky Advocate(2020年)は氷点下数度としています。除かれる成分について、アランの公式サイトはタンパク質やエステルを挙げています。
低温と加水で出る濁り
製品仕様書はスコッチの外観を、淡い黄色から濃い琥珀色までの透明な液体としたうえで、0℃を下回るような低温で保管すると濁ることがあり、水や氷と混ぜた後に濁りが見えるスコッチもあると記しています。
scotchwhisky.comは、度数を46%前後まで上げれば瓶のままでは濁りが出にくいものの、水や氷を加えると度数が下がり、濁りがまた現れると説明しています。同メディアは濁りを2つに分け、低温や加水で出る「可逆的なフロック」を長鎖脂肪酸のエチルエステルなどによるもの、「不可逆的なフロック」をシュウ酸カルシウムの細かな結晶としています。後者については、瓶詰め前の加水に使う水にカルシウムやマグネシウムが多いと生じやすいためその水は脱塩しておくこと、酸洗いしていないフィルターのシートからカルシウムが溶け出すことがあることを挙げています。
加水や氷の入れ方はスコッチの飲み方にまとめています。
46%前後で瓶詰めされる理由
蒸溜所の公式サイトには、度数と冷却濾過の関係を説明している例があります。
| 蒸溜所 | 公式サイトの説明 | 度数の例 |
|---|---|---|
| ブルイックラディ | 過去記事で、46%より低いと成分が溶けきれずに濁ることがあるため46%で瓶詰めすると説明。グラスで加水して44%を下回ると濁るとも書いている。現行のクラシックラディはノンチルフィルター、着色なし | クラシックラディ 50% |
| アラン | 多くのシングルモルトを46%かカスクストレングスで瓶詰めし、46%なら少しの加水にも耐えると説明。43%を超えて瓶詰めするモルトは冷却濾過しない | アラン10年 46% |
| ブナハーブン | 12年をノンチルフィルター、ナチュラルカラーと表示 | ブナハーブン12年 46.3% |
| トバモリー | 12年をナチュラルカラー、ノンチルフィルターと表示し、着色なし、ノンチルフィルターで瓶詰めして口当たりと複雑さを保つと説明 | トバモリー12年 46.3% |
| キルホーマン | 2017年の告知で、限定品ロッホゴルム2017を「すべてのシングルモルトと同様に」ノンチルフィルター、ナチュラルカラーと説明 | ロッホゴルム2017 46% |
濁りが出なくなる度数の境目は、説明する側によって違います。ブルイックラディは46%を挙げ、アランは43%を超えるものを冷却濾過しないとしており、WikipediaはGregory H. Millerの『Whisky Science』(2019年)を出典に46.3%という数字を載せています。Whisky Advocateは目安を約46%としながら、境目はもう少し高いと考える作り手もいると書き、46%を超える製品を冷却濾過するスコッチの蒸溜所は比較的少なく、50%を超えるとさらに少ないとしています。
樽出しの度数で瓶詰めする製品の決まりはカスクストレングスとはで扱っています。
風味への影響は見方が分かれる
アランは冷却濾過で風味を取り除くことはしないと説明し、ブルイックラディの過去記事も、冷却濾過は口当たりや余韻に関わる脂肪酸などを取り除くと書いています。
一方でscotchwhisky.comは、専門の試飲者でも冷却濾過による風味への影響はほとんど見られなかったとする目隠しの試飲の研究があると紹介しています。同じ記事は、バーンスチュワート社の元マスターブレンダー、イアン・マクミラン氏が2010年、同社のシングルモルト4銘柄(ブナハーブン、ディーンストン、トバモリー、レダイグ)を46.3%に上げて冷却濾過をやめるよう会社を説得したことと、それまでフィルターの板に香りと質感に富む油状の成分が残っていたという同氏の話を伝えています。同氏は、変化が同社のモルトではほかより大きかった可能性にも触れています。
ラベルのどこを見るか
- 英語の表記はNon-chill filtered、non chill filteredなどで、ハイフンの有無や大文字小文字は銘柄によって違います。
- Whisky Advocateによると、ラベルに書かれるのはふつう冷却濾過をしていない場合だけで、書くことは義務ではありません。同誌は、non-chill filteredと書かれていないからといって冷却濾過をしているとは限らないとしています。アランのように度数の目安を公式サイトに書く蒸溜所もあります。
- 2009年スコッチウイスキー規則の表示に関する主な条文(第8〜12条)が扱うのは、販売名、蒸溜所名、地域名、pureやmaltの語、熟成年数などで、冷却濾過の有無を書く義務は定めていません。表示の決まりはラベル表示のルールにまとめています。
- 日本の輸入品に貼られる一括表示は、品目、添加物、内容量、輸入者などを書く欄で、国税庁の資料が挙げる表示事項に冷却濾過の有無は含まれません。カラメルを使った場合は添加物の欄に書かれます(ウイスキーの着色とは)。
- 上の表の5蒸溜所は、公式サイトで着色なしも併せて示しています。
出典
- https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5fd36667e90e07662ed92c85/Scotch_Whisky_Technical_File_-_June_2019.pdf
- https://www.legislation.gov.uk/uksi/2009/2890/contents
- https://scotchwhisky.com/magazine/ask-the-professor/13337/chill-filtration-is-it-bad-for-whisky/
- https://whiskyadvocate.com/chill-filtered-whisky-101
- https://www.arranwhisky.com/our-distillery/our-approach
- https://www.arranwhisky.com/shop-whiskies/arran-single-malts/15-arran-single-malt-10-year-old
- https://us.bruichladdich.com/blogs/archive/guide-to-chill-filtration
- https://www.bruichladdich.com/products/bruichladdich-the-classic-laddie
- https://bunnahabhain.com/en-us/products/12-year-old
- https://tobermorydistillery.com/en-us/products/tobermory-12-year-old
- https://www.kilchomandistillery.com/distillery-news/loch-gorm-2017-available-worldwide-from-april-3rd/
- https://en.wikipedia.org/wiki/Chill_filtering
- https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/shokuhin/pdf/0020002-131.pdf
家で試すなら
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よくある質問
- ウイスキーが白く濁ったのはなぜですか。
- 英国政府公開の製品仕様書は、スコッチは0℃を下回るような低温で保管すると濁ることがあり、水や氷と混ぜた後に濁りが見えるものもあると記しています。低温で一部の長鎖エステルが溶けきれなくなるためで、冷却濾過はこの成分を除く工程です。冷却濾過をしていない製品では、加水や氷で度数と温度が下がると濁りが出ることがあります。業界メディアのscotchwhisky.comは、これとは別に、シュウ酸カルシウムの細かな結晶による濁りもあると説明しています。
- ノンチルフィルターの製品に46%が多いのはなぜですか。
- ブルイックラディは公式サイトの過去記事で、46%より低いと成分が溶けきれずに濁ることがあるため46%で瓶詰めすると説明しています。アランは多くのシングルモルトを46%かカスクストレングスで瓶詰めし、43%を超えるものは冷却濾過しないとしています。ブナハーブン12年やトバモリー12年のように46.3%の例もあり、境目の数字は作り手によって違います。
- 冷却濾過をすると味は変わりますか。
- 見方が分かれています。アランは冷却濾過で風味を取り除くことはしないと説明し、ブルイックラディの過去記事は、口当たりや余韻に関わる脂肪酸などが除かれると書いています。一方、業界メディアのscotchwhisky.comは、専門の試飲者でも風味への影響はほとんど見られなかったとする目隠しの試飲の研究を紹介しています。製品仕様書は、冷却濾過を色や香り、味を取り除く目的で使ってはならないと定めています。