スコッチの熟成年数表記とNAS
ウイスキーのラベルにある「12年」「18年」は、中身の熟成年数を示す表示です。スコッチの場合、この数字の読み方は法律で決まっていて、原酒の平均でも最長でもなく、使われた原酒のうち最も若いものの年数を指します。このページでは、最低3年という熟成期間の根拠、年数表記のルール、年数を書かない「NAS」の製品について、当サイトの収録データと合わせて整理します。
最低3年の熟成は法律上の条件
スコッチウイスキーの定義は、英国の The Scotch Whisky Regulations 2009 の規則3に置かれています。熟成については、容量700リットル以下のオーク樽に詰め、スコットランド国内の保税倉庫などで3年以上熟成させることが条件です。この規則は2009年11月23日に施行され、それまでの Scotch Whisky Act 1988 と Scotch Whisky Order 1990 に代わりました。
スコッチウイスキー協会も、すべてのスコッチは法律上3年以上熟成したものでなければならず、多くはその最低限よりかなり長く熟成されている、と説明しています。3年は標準の年数ではなく、スコッチを名乗るための下限です。
「12年」は最も若い原酒の年数
規則12はその冒頭で、熟成期間や年数を示せるのは中身のうち最も若い原酒を指す場合に限るという蒸溜酒規則 Regulation (EC) No 110/2008 第12条3項の義務に触れたうえで、熟成期間や年数に触れる表示を「年」で表すよう定めています。
協会が生産者向けに出しているガイダンスは、8年・12年・15年の原酒を混ぜた場合に表示できる年数は「8年」だけだという例を挙げています。「12年」と書かれたボトルには12年より長く熟成した原酒が入っていてもかまいませんが、12年未満の原酒は含まれていません。「18年」も同じ読み方で、最も若い原酒が18年熟成していることを示します。
ガイダンスの例を整理すると次のとおりです。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 認められる表示 | 「Aged 10 Years」「12 Years Old」「Over 10 Years Old」 |
| 認められない表示 | 「5年から10年」のような幅のある表示、平均熟成年数、最長の原酒の年数、原酒ごとの年数と比率の列記 |
| 認められない単位 | 「Aged 36 months」のように年以外の単位で表したもの |
ウイスキー会社の Compass Box は、公式サイトで「3 Year Old Deluxe」について、3年熟成の原酒は全体の1%未満で残りはそれよりかなり古い原酒だと説明したうえで、規則上開示できるのは最も若い原酒の年数だけだと記しています。
年数は樽の中で過ごした期間
規則3の熟成は、オーク樽の中での熟成です。ガイダンスは、蒸溜年と瓶詰め年を並べて示す方法を、その間の全期間をスコットランドの700リットル以下のオーク樽で熟成させた場合に限って使うよう求めています。瓶に詰めたあとの年月は熟成年数に数えられないため、12年のボトルを購入後に10年保管しても、22年にはなりません。
蒸溜年を示す場合
年数の代わりに蒸溜した年を示す製品もあります。規則12は、蒸溜年に触れる場合の条件として、1つの暦年だけを示すこと、中身のすべてがその年に蒸溜されたこと、瓶詰め年か熟成期間・年数もあわせて示し、蒸溜年と同じ視野に入る位置に置くことを定めています。熟成年数や蒸溜年と誤認されるおそれのある数字の使用も禁じられています。
NASとは
NASは No Age Statement の略で、ラベルに熟成年数を示していない製品を指す通称です。日本語では「ノンエイジ」とも呼ばれます。規則8がラベルに義務づけているのは「シングルモルト スコッチウイスキー」などのカテゴリー名で、年数の表示は義務ではありません。
年数表記がない場合、法律上わかるのは、中身のすべてが3年以上熟成しているという下限だけです。先の Compass Box の例のように、最も若い原酒が3年であれば、大半がそれより古い原酒でも表示できる年数は3年になります。年数表記の有無だけでは、中身の熟成年数の構成は読み取れません。
当サイトの収録データでの内訳
当サイトはスコッチの蒸溜所145件を収録し、そのうち54蒸溜所の蒸溜所ページに銘柄データを掲載しています。54蒸溜所はいずれも稼働中の区分で、銘柄は合計171本、区分は全件シングルモルトです。年数表記があるものは123本、ないものは48本です。地域別の内訳は次のとおりです。
| 地域 | 銘柄 | 年数表記あり | 年数表記なし | 年数表記なしの銘柄がある蒸溜所 |
|---|---|---|---|---|
| スペイサイド | 63 | 56 | 7 | 18蒸溜所のうち7 |
| ハイランド | 41 | 30 | 11 | 15蒸溜所のうち8 |
| アイラ | 29 | 13 | 16 | 8蒸溜所のうち6 |
| アイランズ | 20 | 13 | 7 | 6蒸溜所のうち4 |
| キャンベルタウン | 10 | 6 | 4 | 3蒸溜所のうち2 |
| ローランド | 8 | 5 | 3 | 4蒸溜所のうち2 |
| 合計 | 171 | 123 | 48 | 54蒸溜所のうち29 |
年数表記なしが半数を超えるのは、29本のうち16本のアイラだけです。スペイサイドは63本のうち7本でした。
蒸溜所単位では、収録銘柄がすべて年数表記ありの蒸溜所が25、両方を含む蒸溜所が26、すべて年数表記なしの蒸溜所が3です。最後の3つはキルホーマン、バルブレア、スキャパで、バルブレアの収録銘柄3本は製品名に年号を含むものです。
年数表記のある123本は5年から25年に分布します。多い順に12年が35本(33蒸溜所)、18年が23本(22蒸溜所)、10年が20本(18蒸溜所)、15年が16本(16蒸溜所)で、残る29本がそれ以外の年数です。
これは当サイトが収録した銘柄を数えた結果で、市場全体の比率を示すものではありません。シングルモルトという区分の意味はシングルモルトとブレンデッドの違いで、スコッチの5つの種類と法定定義はスコッチウイスキーとはで扱っています。
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よくある質問
- ウイスキーの「12年」はどういう意味ですか。
- 中身に使われた原酒のうち、最も若いものが12年熟成していることを示します。スコッチでは The Scotch Whisky Regulations 2009 の規則12と、そこで触れられている蒸溜酒規則により、表示できる年数は最も若い原酒の年数に限られます。12年より長く熟成した原酒が含まれていても表示は12年で、平均の年数ではありません。
- NASウイスキーとは何ですか。
- NASは No Age Statement の略で、ラベルに熟成年数を示していない製品を指します。スコッチでは年数の表示は義務ではなく、年数表記がない場合に法律上わかるのは、中身のすべてが3年以上熟成しているという下限だけです。当サイトが収録するスコッチ171銘柄のうち、48本が年数表記なしです。
- スコッチの最低熟成期間3年は何で決まっていますか。
- 英国の The Scotch Whisky Regulations 2009 の規則3です。容量700リットル以下のオーク樽に詰め、スコットランド国内の保税倉庫などで3年以上熟成させることが、スコッチウイスキーの定義に含まれています。この規則は2009年11月23日に施行されました。
- 瓶詰め後に保管した年数は熟成年数に加わりますか。
- 加わりません。熟成年数はオーク樽の中で熟成した期間で、瓶に詰めたあとの年月は数えません。12年のボトルを購入後に10年保管しても、22年にはなりません。
- 熟成期間を「36か月」のように月で表示できますか。
- できません。規則12は熟成期間や年数を年で表すよう定めており、スコッチウイスキー協会の生産者向けガイダンスも「Aged 36 months」のような表示を認められない例に挙げています。