アイラモルトとは
アイラモルトは、スコットランド西岸の内ヘブリディーズ諸島に属するアイラ島で蒸溜されたモルトウイスキーの呼び名です。島の名前は英国の Scotch Whisky Regulations 2009 で保護された地名で、ラベルに使える条件が法律で決まっています。このページでは、法律上の扱い、ピート香が生まれる仕組み、島内の蒸溜所の並び、1983年に閉鎖されたポートエレンのその後を、当サイトのデータと公式資料にもとづいて整理します。
法律で保護された産地名
Scotch Whisky Regulations 2009 の第10条は、産地を示す名前を2つの「地域」と3つの「地方」に分けて保護しています。地域はキャンベルタウンとアイラ、地方はハイランド、ローランド、スペイサイドです。アイラの範囲は「アーガイルのアイラ島」と定められています。
同条により、ウイスキーのラベル、包装、広告にアイラの名を入れられるのは、アイラ島で蒸溜されたスコッチウイスキーに限られます。条件になっているのは蒸溜した場所です。
ピート香は麦芽の乾燥工程で付く
モルトウイスキーの原料になる麦芽は、大麦を水に浸して発芽させ、キルンと呼ばれる乾燥棟で乾かして作ります。ピート(泥炭)は湿地に堆積した植物からなる燃料で、この乾燥の熱源にピートを焚くと、煙に含まれるフェノール類が湿った大麦に吸着します。これが蒸溜後の原酒に残る煙の香りのもとです。ラフロイグ蒸溜所は、1840年に建てたキルンでピートの煙を穴のあいた乾燥床の下から10〜12時間ほど通すと説明しています。
麦芽に移ったフェノール類の量は ppm で表します。アードベッグは公式サイトで、使用する麦芽を最低55ppmとしています。キルホーマンは自社のフロアモルティングで10〜25ppmの麦芽を作り、50ppmの麦芽をポートエレンの製麦所から調達しています。
ノンピートの原酒もある
ピートを焚くかどうか、どの程度焚くかは製麦の段階で決まり、島の蒸溜所がすべて強いピート香の原酒を造っているわけではありません。ブナハーブンの公式サイトは同蒸溜所のシングルモルトをノンピートとして紹介しており、カリラはノンピートとピーテッドの両方を造っています。ブルイックラディは、ノンピートのブルイックラディ、強くピートを効かせたポートシャーロット、さらに強いオクトモアの3系統に銘柄を分けています。
島内の蒸溜所の並び
アイラ島の蒸溜所は、大きく4つの場所に分かれています。
南岸 ポートエレン周辺
ポートエレン村から東の海沿いに、ラフロイグ、ラガヴーリン、アードベッグが続きます。ラガヴーリンは村から約2マイルの位置にあり、1816年創業です。村にはポートエレン蒸溜所と、それに隣接する製麦所があります。
ロッホ・インダールの東岸
島の南から深く入り込んだ入り江、ロッホ・インダールの東岸にボウモアがあります。ボウモアは公式サイトで島最古の蒸溜所としており、当サイトのデータ上の創業年は1779年です。
西部 リンズ半島
島の面積のおよそ3分の1を占める西側の半島で、ブルイックラディとキルホーマンがあります。キルホーマンは西海岸の農場で2005年に生産を始めた蒸溜所で、公式サイトはアイラ島に124年以上ぶりに新設された蒸溜所としています。ブルイックラディの約2マイル南、ポートシャーロット村にはかつてロッキンダール蒸溜所がありました。
北東部 アイラ海峡沿い
ジュラ島と向かい合う海峡側に、南からカリラ、アードナホー、ブナハーブンが並びます。カリラはポートアスケイグ村の近くにあり、名前はゲール語で「アイラ海峡」を意味します。アードナホーはアードナホー湖のそばに建てられ、2018年10月に最初の蒸溜を行いました。
データで見るアイラの蒸溜所
当サイトはアイラの蒸溜所を11件収録しています。稼働中は10件、閉鎖蒸溜所は1件です。ブナハーブンの公式サイトも、アイラの蒸溜所を10軒としています。
| 蒸溜所 | 場所 | 創業年 | 当サイトの区分 |
|---|---|---|---|
| ポートエレン | 南岸 | 1825 | 再建(稼働中に含む) |
| ラフロイグ | 南岸 | 1815 | 稼働中 |
| ラガヴーリン | 南岸 | 1816 | 稼働中 |
| アードベッグ | 南岸 | 1815 | 稼働中 |
| ボウモア | ロッホ・インダール東岸 | 1779 | 稼働中 |
| ブルイックラディ | リンズ半島 | 1881 | 稼働中 |
| キルホーマン | リンズ半島 | 2005 | 稼働中 |
| カリラ | 北東部 | 1846 | 稼働中 |
| アードナホー | 北東部 | 2018 | 稼働中 |
| ブナハーブン | 北東部 | 1881 | 稼働中 |
| ロッキンダール | リンズ半島 | 1829 | 解体(閉鎖) |
創業年は当サイトのデータの値です。地域全体の一覧はアイラの蒸溜所にまとめています。
ポートエレンの閉鎖と再開
ポートエレンは1825年創業の蒸溜所です。1930年に一度閉鎖され、1967年まで蒸溜を止めていました。1973年には蒸溜所の隣に大型のドラム式製麦所が建てられ、当初はカリラ、ラガヴーリン、ポートエレンの3蒸溜所に麦芽を送っていました。
蒸溜所は1983年に再び閉鎖されます。製麦所はその後も、島の蒸溜所が麦芽の一定割合をここから買い入れるという取り決めによって操業を続けました。先に触れたキルホーマンの50ppmの麦芽も、この製麦所から来ています。
所有するディアジオは2024年3月19日に蒸溜所を再開しました。スチルハウスには2対のポットスチルがあり、うち1対は旧蒸溜所のスチルを再現したものです。当サイトのデータではポートエレンの状態を「再建」とし、稼働中に数えているため、閉鎖蒸溜所一覧には含めていません。
ロッキンダール
アイラで当サイトが閉鎖蒸溜所として収録しているのは、ロッキンダールの1件です。1829年にポートシャーロット蒸溜所として蒸溜を始め、のちにロッキンダールと改称しました。1920年に所有者のJ・F・シェリフ社がベンモア・ディスティラリーズに買収され、そのベンモアが1929年にディスティラーズ・カンパニーに買収されると、蒸溜所はすぐに閉鎖されました。設備は撤去されましたが、石造りの熟成庫2棟はブルイックラディがポートシャーロットの原酒の熟成に使っています。
関連ページ
家で試すなら
- グラスグレンケアン グラス蒸溜所のテイスティングでも出てくる形。まずストレートで一口。Amazonで探す ↗
- 本スコッチの本産地ごとに蒸溜所が載っているものを。地図付きだと頭に入ります。Amazonで探す ↗
- 割り材軟水ミネラルウォーターウイスキー1に常温の軟水1。ブレンダーが香りを見るときの割り方です。Amazonで探す ↗
※ Amazonの検索結果へのアフィリエイトリンクです。価格と在庫はリンク先でご確認ください。
よくある質問
- アイラ島には蒸溜所がいくつありますか。
- 当サイトのデータでは、アイラの蒸溜所は11件で、稼働中が10件、閉鎖蒸溜所が1件(ロッキンダール)です。稼働中の10件には、1983年に閉鎖され2024年に再開したポートエレンを含みます。ブナハーブンの公式サイトもアイラの蒸溜所を10軒としています。
- アイラモルトはすべてピートが効いていますか。
- いいえ。ピートを焚くかどうかは製麦の段階で決まります。ブナハーブンの公式サイトは同蒸溜所のシングルモルトをノンピートとして紹介しており、カリラはノンピートとピーテッドの両方を造っています。ブルイックラディもノンピートの銘柄群を持っています。
- ピート香はどうやって付くのですか。
- 発芽させた大麦をキルンで乾かすときに熱源としてピート(泥炭)を焚くと、煙に含まれるフェノール類が湿った大麦に吸着し、その麦芽から造った原酒に煙の香りが残ります。麦芽のフェノール類の量はppmで表され、アードベッグは使用する麦芽を最低55ppmとしています。
- ポートエレンは閉鎖蒸溜所ですか。
- 1983年に閉鎖されましたが、所有するディアジオが2024年3月19日に再開しました。当サイトでは状態を「再建」として稼働中に数えています。アイラで当サイトが閉鎖蒸溜所として収録しているのはロッキンダールの1件です。
- アイラ島以外で蒸溜したウイスキーに「アイラ」と表示できますか。
- できません。Scotch Whisky Regulations 2009 の第10条は、アイラの名をラベル、包装、広告に使えるのを、アイラ島で蒸溜されたスコッチウイスキーに限っています。